【財務の武器 vol.2】「保険提案は何度も受けたが腹落ちしない」という社長を動かした、たった一つの問いかけ

「数字に強い社長」ほど、

保険の根拠には冷めている──

そんな社長を動かした、

たった一つの問いかけのお話です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「保険提案は何度も受けたが腹落ちしない」という

社長を動かした、たった一つの問いかけ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【背景】── 数字を完璧に把握している、若き3代目社長

北陸地区にある、全15室の小さな高級旅館。

露天風呂付き客室で「何もしない贅沢」を売りにする、

しっぽり泊まれる穴場的なお宿です。

年商約1.8億円、粗利益率約80%、経常利益約0.1億円。

借入は約1.4億円──旅館改装にかかる借入が大きく残っており、

年商の約8割という水準です。

社長は3代目で40代前半。

先代から引き継いだ時には業績は頭打ちだったのですが、

Webのテコ入れと旅館の改装で、

業績を回復させた経営者として優秀な方です。

注目すべきは、この社長、

毎月、顧問税理士と「チェックポイント」を

一緒に練り、数字をしっかり把握されている。

PLについては、ほぼ完璧に把握されている社長です。

ところが──そんな社長がこうおっしゃいました。

「保険の提案は、何度も受けてきたんですよ。

 でも、なぜその金額が必要なのか、

 一度も腹落ちしなかった」

節税・退職金、いずれの提案も

「今の自分の会社には不要だ」と判断されていました。

【課題】── 数字に強い社長ほど、保険の “根拠” には冷めている

ここに、保険業界の構造的な問題があります。

数字を完璧に把握している社長ほど、

「借入額をカバーする保険に入りましょう」

「節税効果がありますよ」

「退職金の積立になります」

といった話法では、まったく動かないのです。

会計事務所の先生方も、PLの管理は完璧。

ところが──「いくらの保険に入るべきか」

という問いに対して、

会計事務所も保険会社も、

これまで説得力ある答えを示せなかった。

そこに、社長の不信感の根があります。

【分析】── 保険の必要性は、なぜ生まれるのか

ここで、保険提案の本質に立ち返ってみます。

社長が死んでも、売上が維持されていれば、

会社のキャッシュフローに影響はありません。

だから、保険は本来「不要」なのです。

ところが、社長が死んで、売上が減ってしまう場合──

話はまったく変わってきます。

売上の減少は、ダイレクトに資金繰りを直撃する。

ここを保険で穴埋めする必要があるわけです。

つまり、保険の必要性とは、

「社長の万が一によって、

 会社のキャッシュフローがどれだけ毀損するか」

という、極めて具体的な財務シミュレーションから

生まれるものです。

節税や退職金は、保険の “副次的な効果” にすぎません。

本質は、キャッシュフローの穴埋めなのです。

この本質に迫る、

たった一つの問いかけがあります。

【提案】── 「魔法の問いかけ」で、社長の頭の中を引き出す

私たちが社長に投げかけたのは、

たった一つの質問でした。

「社長が亡くなった場合、

 御社の売上は、どれぐらい減りそうですか?」

一見、デリケートな質問ですが、

社長は意外と冷静に答えてくださいます。

なぜなら、社長ご自身も

実は気にしている問いだからです。

ただ、誰も聞いてくれなかっただけ。

この社長の答えは、こうでした。

「Webと改装で集客の仕組みは整っているので、

 急激に売上が落ちることはないと思う。

 ただ、慢性的に減ってしまうとは思います」

この社長の考えを、私たちは数字に落としていきました。

・1年目  → 90%(対応のドタバタで一時的に減少)

・2-4年目 → 80%(慢性的な売上減の継続)

・5年目  → 100%(オペレーション再構築・回復)

この5年シミュレーションが、

逸失資金アプローチの核となります。

【試算】── 財務から逆算した必要保障額

社長が元気であれば、

本来100%稼げていたはずの粗利益があります。

万が一によって失われる、その差額が「逸失資金」。

1年目の10%減・2-4年目の20%減──

本来稼げていたはずの粗利益が、

消えてしまう。

この逸失資金の累計に、

社長のご希望額である死亡退職金5,000万円を加算して、

財務から逆算した必要保障額は──

約1.3億円。

興味深いのは、この1.3億円が、

借入残高1.4億円とほぼ同額だったこと。

結果として「借入カバー」の金額にも該当したのです。

ただし──これは偶然の一致であって、

別のケースでは保障額がもっと大きくなることもあれば、

小さくなることもあります。

借入額に合わせて保険を販売するのではなく、

財務から逆算した結果として、その金額に至る。

ここが、保険提案の本質的な違いです。

【結末】── 社長の言葉

数字を見せた瞬間、社長はこうおっしゃいました。

「借入と同額の保障が必要と言われても、

 全くピンと来なかったんです。

 でも、これは説得力がありますね」

ご契約に至った瞬間でした。

数字に強い社長を動かしたのは、

新しい数字でも、新しい商品でもありません。

「社長が亡くなった場合、売上はどれぐらい減りそうですか?」

この、たった一つの問いかけです。

【今日のポイント】

「保険の根拠が腹落ちしない」と言う社長に、

私たちはこれまで、別の保険商品を提案し続けてきました。

しかし、社長が求めていたのは、

新しい商品ではなく、新しい問いかけだったのです。

明日、社長と会われる方へ。

これまで通りの提案を一度脇に置いて、

あの問いかけを試してみてください。

社長は意外と冷静に、ご自身の見立てを

言葉にしてくれるはずです。

そして、その答えこそが、

社長が初めて「腹落ちする数字」の出発点になります。

社長の隣の「経営相談の椅子」は、

今日も空いたままです。


この続きは、メールでお届けしています。

月1回、財務と法人保険の実務コラムをお送りしています。
ご登録いただいた方には、商談でそのまま使える
A4両面の資料「節税の真実」もお渡ししています。

「節税の真実」を受け取る(無料)

財務読み解き道場について

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

公認会計士・税理士。EY新日本有限責任監査法人で会計監査に従事したのち、プルデンシャル生命保険でライフプランナーとして8年間、社長と向き合う営業の現場に立つ。2021年に独立し、中小企業の財務顧問として経営に関わる。現在は保険を販売する立場になく、「財務読み解き道場」を通じて、保険営業に携わる方が社長の前で財務を語れるようになるための型を伝えている。

目次